元ヤクザが明かしたシノギの手口
「企業舎弟」や「フロント企業」、「暴力団共生者」や「親密企業」、さらには「密接交際者」――。暴力団とかかわりの深い周辺者たちは、しばしばそう呼ばれる。これらはすべて取り締まる当局側がつくった警察用語である。しかし、それぞれどう違うのか、非常にわかりづらい。たとえば「暴力団共生者」は「密接交際者」より親密度は薄いように感じるが、ではどこで線を引かれているのか。
「暴力団の構成員や準構成員は、警察が〝背番号〟を振って登録していますので、ハッキリしています。この〝背番号〟は当人が死なない限り、組を破門されたり、現役を引退しても警察のデータとして残る。引退後も組織とつながっているケースもあるし、あるいは背番号はないけど組の資金源になっているケースなどをもある。それらは企業舎弟や共生者と認定しています。だが、実際にはグレーなので簡単には公表できない。事件で検挙できれば、そこで関係者などと発表する。それが一般的です」
警視庁組織対策担当のベテラン刑事がそう解説してくれた。
警察は暴力団対策法や暴力団排除条例で組織を締めつけ、組から抜けるよう指導している。その一方で、組から抜けた人間が、暴力団の資金源になっていないか厳しく監視する。元暴力団員としては、せっかく組をやめて堅気になったとしても企業舎弟のレッテルを貼られてはまともな仕事にありつけず、苦労することになる。暴力団関係者か否か、その線引き非常に悩ましいところだ。
前号で東北復興事業についてその実情をありのままに語った呉本幸造は、そこにこう反発する。
「わしは、ヤクザに知り合いはおるし付き合いもある。けど、あくまで組を引退した堅気や。そやのに、企業舎弟扱いされるんは迷惑や。仕事もできひんようになるやないか」
「ヤクザと企業舎弟」の第2回は、警察当局に企業舎弟とマークされ続けてきた呉本が、なぜ裏街道に足を踏み入れ、引退後もヤクザとのかかわりを持っているのか。愚連隊や現役の組幹部だった時代に遡り、その足跡を追った。
続きもどうぞ。