同和と銀行「後編」本日発売
大阪随一の繁華街「キタ新地」の高級クラブ「池内」では、恒例のアイスペールの回し飲みが始まっていた。
「ほな、やろうか。おい、持ってこいや」
小西邦彦がそばの黒服に声をかける。それが合図だ。すぐさまボーイがフランスの高級ブランデー、ヘネシー2本を持って来て封を切る。
……岡野を連れ、夜ごとネオン街を練り歩いていた小西は、ときに支店の行員との親睦会を開くよう、岡野に頼んだ。やがて1年に数度、小西主催の宴席が設けられるようになる。
興が乗ると、行員を連れてキタ新地へ繰り出す。小西にとっては、接待のつもりかもしれない。キタ新地の料理屋で食事をし、会員制のサパークラブやホステスのいる高級店を梯子した。そうして、先の「池内」をはじめ、小西のお気に入りの高級クラブで、ブランデーの一気飲みという無茶な光景が、しばしば展開されたのである。
「小西さんはリンゴが好物でしてね。それも阪神百貨店の食品売り場にあるフジでないとアカンのです。だから、お誘いがあるときは必ず阪神百貨店に寄ってフジを買うておきました。フジを宴席に持っていくと、ご機嫌がようなる。皮も向かずスライスして出すと、むしゃむしゃと食べはるんです。私らにはとてもやさしい人でした」
といった感じです。現代もいよいよラスマエお見逃しなきよう。