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2007-12

ヤメ検⑤

28日、月刊現代が発売されました。この間、ライター仲間のU君からブログへ記事の内容を紹介したほうがいいとアドバイスされたので、さわりを添付します。タイトルは「ヤメ検第5回 東京地検特捜部VS元特捜部長の死闘」ノンフィクションライター森功。

「敵意丸出しでした。『OBだと思って大きな顔をしていたらとんでもない。先輩面して東大閥の後輩を陥れようとしている。我々は現職なんだ。OBなんて関係ない』検事は宗像弁護士を呼び捨てにしながら、そう怒鳴っていました」
 静寂の支配する法廷に、被告人佐藤祐二(64)のはっきりとした言葉が響いた瞬間、傍聴席がざわめいた。2007年11月16日、東京地方裁判所で開かれた福島県知事汚職事件の公判における一幕だ。公判はすでに18回目を数えていた。
 出廷した祐二は福島県の前知事、佐藤榮佐久(68)の共犯として逮捕・起訴されていた実弟である。知事の実弟が出廷するとあって、公判前半の山場として注目された。そこで、被告人の祐二によって明らかにされたのが、現役検事による痛烈なヤメ検弁護士攻撃である。
 発言内容そのものは、取調べ中に佐藤祐二が担当検事から聞かされた言葉だという。名指しされたのが、元東京地検特捜部長の宗像紀夫(65)だ。佐藤榮佐久、祐二両被告の代理人であり、事件の主任弁護士として、古巣と対峙している。だが、後輩の現役検事が、先輩の元特捜部長をここまであからさまに非難するのは極めて珍しい。
 東京地検特捜部が手掛けるような世に聞こえた大事件でも、世上の話題になるのは逮捕・起訴、せいぜい初公判までというケースが多い。たいていの事件は公判が進むにつれ、次第に世間から忘れ去られていく。
 そんな事件風化の原因の一つには、いざ起訴されたら、圧倒的に被告側の部が悪いという側面がある。いくらヤメ検の辣腕弁護士といえど、公判で無罪を勝ち取るのは至難の業だ。いきおい執行猶予付きの有罪判決狙い、というのが、一般的な弁護側の裁判戦略となる。裁判では検察と弁護側、双方が歩み寄り、ある程度罪を認める。連載2回目で紹介したが、福島とほぼ同じ時期に大阪地検特捜部によって摘発された和歌山県知事による建設談合事件などは、その典型例かもしれない。
 だが、こと福島県知事の汚職事件では、検察とヤメ検の歩み寄りの構図が完全に崩れているのである。公判における知事の実弟証言は、それを如実に示しているといえる。
被告人を揺さぶる取調べ上の手段には違いない。が、検事が「先輩面して東大閥の後輩を陥れようとしている」とまで貶めるケースは、そうそうない。しかも相手は元特捜部長だ。検事の口から出た「東大閥の後輩」とは、検察主流派である東大卒の法務キャリア官僚のことを指す。事件の被告代理人である宗像は、名古屋高検の検事長まで務めた大物弁護士だが、東大卒の法務キャリア組ではない。本連載中に何度か触れたが、法務検察では、現場の捜査検事に対し、法務省勤務が長いキャリア組を赤レンガ派と呼ぶ。そんな検察の内情まで法廷でさらけ出したのである。
 特捜検事と元特捜部長の対立。公判では、ねじれた事件の真相が垣間見える。
 
 ざっとこんな書き出しですが、つづきに興味のある方は是非書店へ。
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テーマ:司法制度 - ジャンル:政治・経済

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プロフィール

森功

Author:森功
福岡県出身のノンフィクション作家。08年「ヤメ検」09年「同和と銀行」(ともに月刊現代)の両記事で2年連続「雑誌ジャーナリズム賞作品賞」。18年「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」(文藝春秋)が大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
主な著作は「サラリーマン政商」(講談社)、「黒い看護婦」「ヤメ検」(ともに新潮文庫)、「許永中」「同和と銀行」(講談+α文庫)、「血税空港」「腐った翼」(幻冬舎)、「泥のカネ」(文藝春秋社)、「狡猾の人――防衛省を食い物にした小物高級官僚の大罪」(幻冬舎)、「なぜ院長は『逃亡犯』にされたのか――見捨てられた原発直下『双葉病院』恐怖の7日間」、「大阪府警暴力団刑事『祝井十吾』の事件簿」(講談社)、「平成経済事件の怪物たち」(文春新書)、「紛争解決人 世界の果てでテロリストと闘う」(幻冬舎)、「現代日本9の暗闇」(廣済堂出版)、「日本を壊す政商 パソナ南部靖之の政・官・芸能人脈」(文藝春秋)、「総理の影 菅義偉の正体」(小学館)、「日本の暗黒事件」(新潮新書)「高倉健 七つの顔を隠し続けた男」(講談社)、「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」(文藝春秋)、「地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団」(講談社)、「官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪」(文藝春秋)など。最新刊は「ならずもの井上雅博伝 ヤフーを作った男」(講談社)。2021年「鬼才 伝説の編集人齋藤十一」刊行予定

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